『大地を測る』 New!
檀原 毅 著(出光書店:出光科学叢書 11)[☆]
1976年
明治期から昭和40年代までの我が国の測地・測量史を、著者が自らの体験を踏まえて随筆風に紹介し
たもので、他書では扱わない裏話や苦心談も載っており、大変参考になった。装丁は古く、既に重版
していないかもしれないが、この分野を勉強する際に最初に読む本として最適だと思う。
参考:地図と測量の科学館「一等三角点を散歩する」 http://www.gsi.go.jp/MUSEUM/TOKUBE/KIKA5/smain.htm
上掲書に関連する本として、筑摩書房(ちくま新書)『地図に訊け!』(山岡光治 著,2007年06月,
ISBN:978-4-480-06365-6)は、国土地理院で地図作成に長年従事した著者が、地図好きを増やすべく、
地図測量に関する興味深い話題を提供してくれる。
また、参謀本部陸地測量部による測量については、文春文庫『劒岳 <点の記>』(新田次郎 著)が、
明治末期の陸地測量部・柴崎測量手による三角点敷設の苦労を描き、三角点網の形成が如何に大変な
事業であったかの一端を教えてくれる。劒岳をめぐる話題に興味のある方には、日本地図センターの
月刊誌『地図中心』2007年6月号(特集 剱岳測量100年)もお薦め。
『入試地理 地形図の読み方』 New!
武井正明 著(三省堂)[☆]
1988年12月,ISBN:4-385-22594-X
地形図の読図に関する書籍は数多く出ており、例えば日本地図センター『地形図の手引き』などは
王道かもしれない。が、私にはちょっと淡白に感じられ、同じようにコンパクトでかつ例題が豊富な
本はないかと探していたら、本書を見つけた。大学入試の地理分野の参考書で、前半が地形図とその
読み方の解説,後半が腕試しの入試問題、と言う構成。地形の説明が図入りで大変わかり易く、安価
(本体 600円)なこともあってお買い得の一冊。
『絵とき 測量』
粟津清蔵 監修(オーム社)[☆]
1993年05月[初版]; 2005年07月[改訂2版],ISBN:4-274-20107-4
GPSの専門書や論文は、大なり小なり測量に関連しているものが多く、測量技術者でない者にとっ
て、測量の技術・用語は内容を理解する上で手ごわい障壁となる。
本書は、測量の歴史から具体的な測量形態(三角/多角測量,水準測量,写真測量など),測量器具
(トランシット,光波測距儀,トータルステーションなど)および地図の作成原理まで、図を豊富に
用いてわかりやすく説明した本。GPSに関する記述は少ないが、測量全般の知識が身に付く。
2005年07月に、「GPS測量」の章を新設した『改訂2版』が出た。
『図解土木講座 測量学(第二版)』
小田部和司 著(技報堂出版)[☆〜☆☆]
1999年09月,ISBN:4-7655-1393-9
土木工学の立場から、測量作業(実技,計算)の基本を解説した本。
イラストを多用している点は『絵とき 測量』と同じであるが、前掲書がどちらかと言えば測量一般
の紹介に重点を置いているのに対し、本書は実務を学ぶ人向けに実技の説明にも力を入れている。
また、普通は紙幅の都合で省略されることが多い各種計算過程も細かく書いてあり、理解しやすい。
『サーベイハイテク100選 新訂版』
村井俊治 企画・監修(日本測量協会)[☆]
1991年[50選],1996年[100選],2000年[新訂版],ISBN:--
解説と写真の見開きで構成された、GPSを含む測地・測量分野の先端技術を紹介した本。
『50選』→『100選』→『100選 新訂版』と、矢継ぎ早に改訂が進んでいるところに、この
分野の進展の早さがうかがえる。GPS,リモートセンシング,トータルステーション,レーダ等
を利用した応用システムの広がりを実感できる。
『地球を測った科学者の群像』
檀原 毅 著(日本測量協会)[☆]
1998年04月,ISBN:--
測量技術の発展に貢献した古今東西の著名人の略歴を、数ページずつの分量で紹介した本。
ガリレオ,ケプラー,ドップラー,ニュートン,ホイヘンス,ラプラスと言った数学者・物理学者の
他、ヘイフォード,ベッセル,メルカトル,ランベルト,エベレストなど、図法・測地系に名を残す
偉人が顔を揃えている。技術書とは少し違うが、先人たちの幾多の努力が積み重なった上に今の技術
があることを教えてくれる一冊。
『図説 伊能忠敬の地図をよむ』
渡辺一郎 著(河出書房新社)[☆]
2000年02月,ISBN:4-309-72624-0
これもGPSとは直接関係は無いけれども、測量・地図に関心のある方には楽しく読める本だと思う。
今から約200年前、商家を隠居後に測量学を究めた伊能忠敬が、十数年を費やして作った「大日本
沿海輿地(よち)全図」は、後に海外列強の専門家も認めたくらい正確だった。
本書は、伊能忠敬の測量行の足跡を辿り、現存する伊能図を掲載・解説する。また、当時の測量器具・
測量方法も紹介しており、現代から見れば貧弱な装備であれほどの地図を作った偉業に驚かされる。
なお、伊能忠敬を描いた小説に、講談社文庫『四千万歩の男』(1)〜(5)(井上ひさし 著)がある。
苦難の蝦夷地測量行を中心に、忠敬と彼を支える周囲や旅先の人々との交流を描いた長編。
『地震の基礎知識 改訂』兵庫県南部地震から学ぶ New!
鎌谷秀男,三枝省三 共著(修成学園出版局/コロナ社)[☆]
2001年06月,ISBN:4-915783189
土木・建築技術者の育成に携わる著者が、阪神淡路大震災の実体験をベースに、地震発生のメカニズ
ムや地震予知の現況等について平易に解説した本。
著者自身が撮影した、冒頭から数十ページにわたる被災状況の写真が、地震の脅威を生々しく伝える。
『新・歩いて見よう東京』 New!
五百沢智也 著(岩波書店:岩波ジュニア新書)[☆]
2004年05月,ISBN-13:978-4005004706
東京の新旧名所を辿る幾つかの徒歩コースを設定し、詳細な説明を加えた東京探索ガイドの新版。単
なる名所案内ではなく、歩くことで見えてくる東京の地形や成り立ちを、地図に親しみながら感じて
ほしいと言う、著者の意図が伝わってくる。私も歩き回るのは好きな方なので、殆どの説明について
情景を思い浮かべながら楽しめた。本書を参考にして実際に歩けば、起伏に富んだ東京の地形を肌(
足の裏?)で感じることができると思う。著者の描くイラスト地図(地形を強調した俯瞰図)は秀逸。
東京探索と言えば、縄文海進期の地形に着目して文化人類学の視点から"都市"東京のなりたちを考察
する、講談社『アースダイバー』(中沢新一 著,2005年05月,ISBN:4-06-212851-9)も興味深い。
また、下記ホームページの「技術ノート」も、東京の今昔の地形を辿るのにお薦め。
(社)東京都地質調査業協会 http://www.tokyo-geo.or.jp/
『リモートセンシング読本 −インターネットの情報満載−』 New!
岩男弘毅 著(日本測量協会)[☆]
2005年06月,ISBN:4-88941-000-7
衛星リモートセンシングの原理から実例までを丁寧に解説した入門書。更に知識を広げるための URL
情報を多数掲載しており、著者の丹念な検索・調査ぶりがよくわかる。衛星画像データの入手・利用
方法の説明もあって、眺めるだけでなく実際に手を動かしてリモートセンシングの世界を体験できる
ように配慮している。本文の画像やリンク集を収録した CD-ROM 付き。
読者がインターネット検索する(パソコンを使う)ことを前提としているので、ブラウザで閲覧でき
るHTMLファイル形式のCD-ROM版として、最初から発売してもよかったのでは?
『地図からの発想』 New!
中村和郎 編著(古今書院)[☆]
2005年09月,ISBN:4-7722-5102-2
様々な分野の52名が紹介する、地図を読む/地図を作る/地図で考える、ことの事例集。カラー地図
をふんだんに使った見開き1枚ずつの構成で、楽しく眺めるうちに、地図化によって物事の新しい見
方が得られる面白さや、地図表現の多様性・可能性を感じることができる。
読んでいて、小学生の頃、自分の住む市や県の白地図に植生や人口などの分布を色づけした作業(確
か屋外実習もセットになっていた)が面白かったことを思い出した。地図好きの原体験かもしれない。
『地図を学ぶ』地図の読み方・作り方・考え方 New!
菊地俊夫,岩田修二 編著(二宮書店/めぐろシティカレッジ叢書)[☆]
2005年10月,ISBN:4-8176-0234-1
東京都目黒区(日本地図センターの所在地)の、生涯学習講座で採り上げたテーマをまとめたもの。
副題にある通り、地図の話題を様々な切り口で紹介し、読者の知識を深めるように配慮している。
『地球 図説アースサイエンス』 New!
産業技術総合研究所・地質標本館 編(誠文堂新光社)[☆]
2006年09月,ISBN:4-416-20622-4
産業技術総合研究所・地質標本館(茨城県つくば市)の創立25周年を記念して出版された「図録」。
地質標本館のガイドブックであり、楽しい図鑑としても読めるし、地球物理学,地質学,鉱物学など
に関する入門書にもなっている。
『電波ってなあに』
若井 登 編著(電気通信振興会)[☆]
1991年,ISBN:4-8076-0130-X [在庫切れ]
GPSを勉強するにあたり、電波についてどれだけ知識があるかは人によって随分異なると思うが、
あまり自信のない人には、本書は楽しく読めて勉強になり、興味を深めることになるだろう。
通信総合研究所の一般公開日に、子供から大人まで様々な見学者が電波について発する素朴な質問に
悩まされた研究員らが、それらを丁寧に解説した本。問答形式にするなど工夫をこらしており、理解
しやすい。但し、高度な内容も扱っているので、見た目以上に読みごたえがある。
難しいことを、数式をできるだけ用いずに説明しようとする執筆者の苦労が伝わってくる。
上記以外の電波に関する入門書としては、例えば後藤尚久先生の著作、オーム社『電波がわかる本』
(2003年11月,ISBN:4-274-03616-2)や、電気通信振興会『電波とはなにか』(2003年06月,ISBN:
4-8076-0341-8)が、電荷・電気力線・磁力線から丁寧に説明されており、わかり易いと思う。
テキストブック『無線通信機器』
提坂秀樹,大庭英雄 共著(日本理工出版会)[☆〜☆☆]
1991年,ISBN:4-89019-136-4
送/受信機に関する広範囲な内容を、詳細かつ丁寧に解説した本。所々数式をまじえているが、学生
を主な読者対象としているので、専門書にありがちな「ついて行けない」書き方にはなっていない。
イラストの豊富な啓蒙書を卒業して、本格的な知識を身に付けようとする方には、おすすめの一冊。
文中の例題に、陸上無線技術士の試験問題を採用しており、「無線工学A」の対策本にもなると思う。
『スペクトラム拡散通信』
山内雪路 著(東京電機大学出版局)[☆]
2001年06月[2版],ISBN:4-501-32210-1
GPSで使われているスペクトラム(スペクトル)拡散通信技術の解説書の多くは、数式を多用して
おり、初心者には敷居が高い。本書は、直接拡散方式と周波数ホッピング方式の2種類について、図
と写真を多く用い、難しい技術をわかりやすく説明している。分量が比較的少ないので無理無く読み
切ることができ、専門書へのステップになる。
また、同じ著者・出版社の『ディジタル移動通信方式』(2000年12月[2版],ISBN:4-501-32170-9)
も、移動通信技術の概要把握に有効である。
『絵ときでわかる 無線技術』
山崎靖夫 著/高橋 寛 監修(オーム社)[☆]
2002年10月,ISBN:4-274-03584-0
これから無線工学を学ぶ人や無線技術の概要を把握したい人を対象に、無線技術全般についてコンパ
クトにまとめた入門書。アンテナ,受信機,送信機,測定装置等の項目毎に、メーカで無線機器開発
に携わった経験を持つ著者が、図を用いてわかりやすく説明してくれる。
無線に関する解説を充実させるために、電磁界や電子回路一般についての説明は最小限に留めてある
ので、電磁気学や電子回路の予備知識(ごく初歩的な)を仕入れてから読むと、理解が早まると思う。
『ユビキタス無線工学と微細RFID 無線ICタグの技術』
根日屋英之,植竹古都美 共著(東京電機大学出版局)[☆〜☆☆]
2003年04月[初版],ISBN:4-501-32280-2
2004年07月[2版],ISBN:4-501-32420-1
RFID(Radio Frequency IDentification=無線移動識別)装置は、至近距離通信を前提とし、情報を
書き込んだ応答器(微細RFIDチップ)に質問器が問いかけると、応答器が当該情報を返送するしくみ。
従って、応答器を"至る所に"(Ubiquitous=ユビキタス)埋め込んでおけば、利用者は質問器を使っ
て至る所で情報を得ることができる。室内や地下における測位にも応用可能で、GPSや小型モーショ
ンセンサ等と組み合わせて使えば、場所の制約を受けないポジショニングの実現が期待できる。
本書は、ユビキタスの考え方や、それを実現する無線通信機器の設計概念を紹介した入門書。一般的
な無線通信機器を設計する上での基礎理論・手法も、紙幅を十分とって解説しており、ありがたい。
付録に、著者らが開発したRFIDチップの実物サンプルが付いている(初版限定)。
2004年7月に『第2版』が出た。
なお、無線ICタグの最新事例,市場動向,将来展望については、日経BP社『無線ICタグのすべて』
(RFIDテクノロジ編集部 編,2004年03月,ISBN:4-8222-2114-8)が詳しい。
『無線通信とディジタル変復調技術』 New!
石井 聡 著(CQ出版社)
2005年08月,ISBN:4-7898-3034-9
題名通り、無線通信とディジタル変復調技術について平易に解説した本。この分野の技術書の多くは
初歩的(概要だけ)/専門的(数式乱舞)のいずれかに偏る傾向が強いように思えるが、本書は丁度
良い。また、CDMA(Code Division Multiple Access)は勿論、OFDM(Orthogonal Frequency Division
Multiplexing)や UWB(Ultra Wide Band)と言った、比較的新しい技術に関する解説も充実している。
『可視光通信の世界』LEDで拓く「あかりコミュニケーション」 New!
中川正雄 監修,可視光通信コンソーシアム 編(工業調査会)[☆]
2006年02月,ISBN:4-7693-1251-2
可視光通信の基礎,応用,今後の展望をわかりやすく解説した、この分野で初めての本。
可視光通信は、照明と言う既存インフラ(しかも好立地)が利用でき、セキュリティの面でも優れて
いる(到達範囲が限定され、送信媒体が人の目で見えるため)など、ユビキタス社会の実現に向けて
重要な役割を果たす技術であることがよくわかる。他書にはあまり無い白色LED の解説もありがたい。
『音で海を見る』 New!
古沢昌彦 著(成山堂書店)[☆]
2001年08月,ISBN:4-425-85061-0
空気中とは逆に海中では「電波<光<音波」の順に伝わり易いため、海中における測定や通信は主に
(超)音波を利用して行う。興味を覚えて海中音響技術の入門書を探したところ、なかなか見つからず、
ようやく本書に行き着いた。
漁業・海底探査・海洋観測など、幅広い分野における音の利用法を知ることができ、音だけでこんな
ことまでわかるのか、と思わせてくれる一冊。
『「白い光」のイノベーション』ガス灯・電球・蛍光灯・発光ダイオード New!
宮原諄二 著 (朝日選書 =朝日新聞社)[☆]
2005年12月,ISBN:4-02-259890-5
太陽光に近い「白い光」を手に入れるために人々が傾けてきた英知の数々を紹介する。あかりの歴史
だけでなく、発明の経緯,従来技術との葛藤,イノベーション(社会システムを含めた変革)となり
得た原因など、多くの示唆に富む内容の読み物となっている。
あかりと同様、ライフラインの一部になりつつある測位サービスの発展と今後を考える上でも、参考
になると思う。
『痛快! コンピュータ学』
坂村 健 著 (集英社文庫 =集英社)[☆]
2002年,ISBN:4-08-747428-3
TRONや「どこでもコンピュータ」の提唱者である坂村先生による、万人向けのコンピュータ科学
の入門書(集英社インターナショナル刊[1999年]の文庫化)。コンピュータの成り立ちから、情報
理論,半導体,プログラム,オペレーティングシステム,インターネットに至る広範囲な内容を、
平易な語り口で明快に説明している。単なる技術礼讃ではなく、国家や企業が絡んだ業界の暗い一面
や技術の功罪についても解説し、今後のコンピュータ社会はどうあるべきかを読者に問いかける。
なお、日本放送出版協会の NHK人間講座 2004年2月〜3月期『「ユビキタス」社会がやってきた』
─人とコンピュータの未来─(2004年01月,ISBN:4-14-189098-7)は、坂村先生が講師を務めた
NHK教育テレビ講座のテキスト。前掲書の内容にここ数年のコンピュータの技術革新と問題点を加えて、
ユビキタス社会の現況と将来像を紹介し、その社会で個々人がとるべき姿勢(考え方)を提案する。
『マンガ 確率・統計が驚異的にわかる』
ゴニック,スミス 共著/中村和幸 訳 (白揚社)[☆]
1995年,ISBN:4-8269-0069-4
GPSに限らず、データ解析をしていると、確率・統計の勉強をやり直す必要性を痛感させられる。
かと言って、この分野の解説書は特に堅苦しいものが多い(苦手だから余計にそう思うのだが…)。
本書は、確率・統計に拒否反応を起こす人におすすめ。
「驚異的にわかる」とは少しオーバー。それでも、無味乾燥な技術書よりは、遥かにわかりやすい。
原著者が外国人のためか、内容そのものより、挿入された漫画のウィットを理解する方が難しい?
『いかにして問題を解くか』
G.ポリア 著/柿内賢信 訳 (丸善)[☆〜☆☆]
1954年,ISBN:4-621-04593-8
分野を問わず、問題を構成する要素が複雑になってくると、どこから手をつけてよいか途方にくれて
しまうことがよくある。本書は、先生が学生に数学の課題を与え、対話しながら解法へと導いていく
形式を通じて、問題をしなやかに捉える力・解く力を養う、1954年初版の古典。従来からの論理思考
である「演繹法」および「帰納法」と共に、「発見的手法」(heuristics)の可能性を追及しており、
創造的思考法のテキストとしても読める一冊。
なお、産能大学出版部『増補版 NM法のすべて』(中山正和 著,1980年,ISBN:4-382-04649-1)
では、各思考法の違いを、下記のような具体例で紹介している。
演繹法(絶対的な法則に基づく判断) : 袋の中の豆は白い → 袋から豆を出す ∴ その豆は白い
帰納法(試行結果による法則性の発見) : 袋から豆を出す → その豆は白い ∴ 袋の中の豆は白い
仮説設定法("ハッと気づく"法則の発見): その豆は白い → 袋の中の豆は白い ∴ 袋から豆を出したのではなかろうか
『理科授業で使う思考と表現の道具』
中山 迅,稲垣成哲 編著 (明治図書出版)[☆]
1998年06月,ISBN:4-18-625401-X
「概念地図法」(Concept Mapping)は、テーマを図式的に表現し、関連項目の間を言葉(動詞)で
結ぶことにより、全体の俯瞰と各項目の関係把握とが同時にできる、と言う手法。以前から教育用の
問題解決訓練や大量データの整理に使われ、最近ではウェブサイトへの応用も進み、知識ベース処理
向けのソフトウェア製品まで市販されている、とのこと。
本書は、「概念地図法」および「描画法」と言う手法を小学校の理科授業に使った先生方の体験談を
まとめたもので、概念地図法の概要と具体例を気軽に知ることができる、数少ない日本語の本である。
『ザ・マインドマップ』 New!
トニー・ブザン, バリー・ブザン 著, 神田昌典 訳 (ダイヤモンド社)[☆]
2005年11月,ISBN:4-478760993
図解によるテーマの整理には、上記「概念地図法」以外にも、30年以上前から提唱され、世界で広く
使われている「頭脳地図」(Brain Map/Mind Map)と言う手法がある。本書はその解説書の決定版。
脳の働きのしくみを踏まえた「放射思考」とその外面化である「マインドマップ」について、初心者
から上級者までを対象に、開発者自身がわかりやすく説明している。
親本として、東京図書『頭がよくなる本』(T.プザン著,1997年,ISBN:4-489-00526-1)がある。
また、ダイヤモンド社『勉強が楽しくなるノート術―マインドマップ for kids』(T.プザン著,
2006年,ISBN:4-478761051)と言う、子供(初心者)向けのカラフルで楽しい本もある。
『コミュニケーション技術』
篠田義明 著 (中公新書 =中央公論新社)[☆]
1986年,ISBN:4-12-100807-3
一般に、実験や結果解析は楽しいが、それに続く報告書(論文)の作成は、厄介に感じることが多い。
自分ではうまく書いたつもりでも、読み手に真意が伝わらず、文章力の不足を痛感することもある。
本書は、実用文の書き方(テクニカル・ライティング)のエッセンスを、悪例とその改善例を示して
具体的に解説した本。文章作成はもとより、口頭での発表にも役立つ(コミュニケーションのための)
技術を、数多く紹介している。読む度に、これまで自分が書いてきた文章を思い出し、冷や汗が出る。
なお、資料を作る際には、日本経済新聞社『プレゼンテーションの説得技法』(富士ゼロックス編,
1989年05月,ISBN:4-532-04567-3)も、心強い味方になってくれる。