研究紹介2

研究会の歴史と目的
 日本航海学会「海上交通法規研究会」は、海上交通に関連する法令を学際的かつ体系的に研究する集団であり、その前身は、本学会の旧研究組織であった運用研究部会第4分科会(昭和42年10月20日設立)にあった。すなわち運用研究部会に4つの分科(第1分科会:船舶整備、第2分科会:操船運用、第3分科会:載貨、第4分科会:航海法規)が創設され、以来、第4分科会は海上衝突予防法、港則法、旧特定水域航行令、海上交通安全法、海難審判法等を研究対象とし、内外の文理解釈や論理解釈を議論するとともに、その成果を実務、行政および教育の場に実践的に反映させ、船舶の安全運航や航行安全に貢献してきた。
議論されてきた内容の一部を例示すると、来島海峡における航法の問題、「衝突のおそれ」の判断時期や避航開始時期の問題、レーダ航法の解釈の問題、海上交通安全法の制定やその矛盾点の問題、雑種船の定義の問題、国際海上衝突予防規則の改正の問題、「妨げてはならない」と「避けなければならない」の法的概念、「安全な速力」の法的概念、「船員の常務」の法的概念等、枚挙に暇がないが、これらが海事社会に定着したことは、法規部会としての第4分科会の大いなる成果であるといえる。
 学会の活性化と多様化社会に応えるために研究組織の改革が行われ、他の研究部会や分科会と同様、運用研究部会第4分科会も発展的に解消し、平成4年秋に鈴木三郎教授(神戸商船大学:当時)を会長にたてて、名称も「海上交通法規研究会」と改め再出発を果たした。本研究会は、海上交通の安全に資するため、海上交通三法をはじめとする海事公法および海洋法その他の諸法規や条約並びに海上交通政策を対象とし、法令に関してはその適用や論理構成の高度化に関する問題、法作用の改善や立法に関する問題、政策に関してはその立案・意思決定・評価に関する問題、さらに近年においてはSOLAS条約改正をうけた海事セキュリティの問題をとりあげ、本学会の発展に寄与することを目指している。
研究会の目的については、研究会設立申請書の中に、「本研究会は、海上交通法規に関する下記の諸事項について、人間性及び社会性並びに交通政策的な観点から、調査・研究を行い、それらの成果を定期的に開催する発表会において発表することにより本学会の事業の発展に寄与するものである。
(1) 法の適用に関する事項
(2) 論理構成の高度化に関する事項
(3) 法作用の改善に関する事項」と明文化している。
(参照:日本航海学会 海上交通法規研究会 活動成果報告書 平成20年5月版)

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