- 航空宇宙研究部会の発足とその意義
航空宇宙研究部会は、3年前の当学会の総会の承認を
受けて発足した新しい研究部会である。その発足の経緯
と経過は、既にこの航海誌の部会発足記念の特集号で
あった、第89号に述べられている(1)が、
その要旨を含めてもう一回、ここで振返ってみたい。
わが国には、現在も、航法学会(英文名に直すと
The Institute of Navigationで、これは、本学会の
英文名になっている)という名の学会がない。
そこで、航法学会の国際組織である国際航法学会が
作られるときに、日常的に最も航法学会に近い活動を
しているとともに、英国、フランスなどの航法学会と
親密な関係にあった日本航海学会が、この国際組織に
加盟するのは、自然のなりゆきであったと考えられるが、
その際、航空関係の航法に関する活動も含めてもらわ
なくては困るという一種の注文がついていた。
こうした、注文がついているという話は聞かないが、
本誌でも既に紹介した通り、本学会とは反対の例が
カナダにあって、カナダで、国際航法学会へ参加して
いるのは、カナダの航空宇宙学会の中の、カナダ航法
ソサイエティである。このソサイエティというのは、
日本ではまだ余りなじみのない名称であるが、大きな
学会における、部門別の研究グループといった感じの
組織とされている。
こうした、注文に対応するために、学会としても
種々の対応が行われているが、その一つとして、
航空宇宙の航法の研究グループを作ることが考えられた。
そのため、昭和58年に、試行的に航法研究部会の軒を
お借りして、研究部会の中の組織としての航空宇宙
分科会を発足させることになった。
この分科会では、毎年一回、東京で研究会を開催
していたが、航法研究部会の関係の方々のご協力も
あって、予想外に盛会であり、独立の研究部会を
つくる可能性が示唆されることになった。
こうした実績をふまえて、理事会の承認のもとに、
昭和61年度の学会の総会で、学会の5番目の研究部会
としての航空宇宙研究部会の発足とその関連の予算が
承認されて、今日に至っている。
このような経緯を知らないと、航海学会に何故、
航空宇宙の航法を研究するグループがあるのかと、
奇異に感ぜられる方があるかもしれない。しかし、
よく考えてみるとそうでもないことが分かるだろう。
航法という語の語源は、ラテン語のnaivis(船)
igare(導く)であることを引用するまでもなく、
有史以前から船舶に使用され、発達してきた技術である。
これに対して、航空の歴史は、100年足らず、
気球時代を含めても約200年、宇宙航行に至っては
30年余りの歴史があるにすぎない。航空機の航法の
最初は、航海技術の流用であったものが、次第に独自の
発達をとげ、それらが、宇宙技術を生み、そして、
船舶に還流してきているものも少なくない。
また、今日では多くの航法システムは、航空、船舶の
差なく使用されるようになってきている。例えば、
オメガ航法システムは、最初は船舶に多く用いられて
いたものが、最近では、むしろ、ジェット旅客機が
重用しており、アメリカでは、これも船舶用であった
ロランCシステムを使用するヘリコプタや小型機が増え、
海外のロランC局は廃止するというのに、北アメリカ大陸
中部に2チェーン(9局)もの新しいロランCチェーンの
新設が、連邦航空局からの委託で、コーストガードで
進められる計画になっている(2)。
このような例以外にも、船舶の航行慣性と航空管制の
類似、両者のウエザールーティングの手法、衝突防止の
手法など、共通的に研究すべき分野も少なくない。
こうした境界領域の研究が多くなっているのも、
最近の技術の特長であり、メカトロニクスの研究者は、
機械と電子の両学会の動向に注目するとともに、
それらの両学会での活動が必要となってくるのである。
同様に、航海の技術者は関連する航空技術の発達を
無視することはできず、航空技術者は、進んで航海学会
に加入して、学会活動をすることの意義を見出せる時代
になってきているということができるであろう。
- 航空宇宙研究部会の活動の概要
他の研究部会と同様に、この部会も、春と秋の学会の
講演会の前日に半日の研究会を開催している。当初は、
他の研究部会との並行開催であり、地方での開催のときは、
航空関係者の不在も懸念されたが、現在のところ順調に
研究会は進められている。
議題については、宇宙利用や宇宙技術を含めた新しい
航法技術や話題となっている新型旅客機とその航法装置等を
中心に、できるだけ幅広い技術を学会関係者か、その近くに
いる方々に依頼をして紹介を願っている。
まず、研究部会発足前の航法研究部会の航空宇宙分科会
時代の発表議題の分野別に分類して示すと、次の通りになる。
現用のシステムの現状と研究については、機上のオメガ
航法装置について実験装置と実際の旅客機での利用(2件)、
超短波全方向式無線標識(VOR)の新技術、計器着陸方式
(ILS)の誤差解析、また、開発中のシステムについては、
マイクロ波着陸方式(MLS)の開発、航法と航空管制への
衛星利用(2件)、慣性航法の新技術が、その他の話題
として、管制間隔と衝突確率、最適航路と最適高度と、
合わせて10のテーマが発表された。
このうち、6件の発表は電子航法研究所の担当者に
依頼したものであった。
部会発足後は6回の研究会が開催されている。61年度は、
発足が春の総会後であったために、春の研究会は、開催できず、
その代わりに、従来の分科会時代と同じ形で、2月に東京で
開催した。
この6回に、合計して19のテーマが発表されたが、それらを
同様に分類して示す。
まず、現存の航空航法システムの話題としては、航空管制用
と防衛用レーダの現状、二次監視レーダの現状とその研究、
および空対地データ通信の現状が、また、新型旅客機と
その搭載航法装置としては、B767、A300とA320の3種類の
概要が紹介された。
次に、開発中のシステムとして、衝突防止システムの開発の
現状の他に、衛星関係として、航空衛星通信の開発の展望、
インマルサット衛星と日航機による航空衛星通信の実験、
無線測位衛星システム(RDSS)の展望、GPS衛星航法と
慣性航法装置の総合化とその自動車による実験結果が、
それぞれ報告された。
国際的な話題としては、アメリカの航空無線技術委員会
(RTCA)における2010年を目途とする航空航法技術の審議結果、
国際民間航空機関(ICAO)のFANS(将来の航空航法システム)
特別委員会の同様な審議状況、および、中国におけるMLSの開発を
中心とした研究の紹介が報告されている。
航空機の運航関係としては、ウインドシアーの研究の現状と
それに対する操縦上の対策、成田と羽田の間のヘリコプタ輸送に
ついての講演があった。
特殊な話題として、エキスパートシステムの航空管制への応用、
また、地域性を生かした話題として、神戸での開催時に、関西
国際空港の計画とその現状、鹿児島での開催事に、種子島からの
ロケットの打ち上げのその追跡管制の話を、それぞれお願いした。
これらのご講演の多くは、その後、それぞれの著者と学会の
編集委員会のご好意により本誌"航海"に掲載されているので、
それらを参照して頂きたい(3)。
この研究部会の課題の一つとして、航空宇宙関係の会員の増加に
協力するという問題がある。そのためと学会会員への部会活動の
PRのために、年4回の割りで"航空宇宙ニュースレター"を配布
している。
B5版4ページのささやかなものであるが、研究会の予告とその報告、
航空宇宙航法に関するいろいろな話題と関連の学会活動の
紹介、非会員への当学会出版物の紹介と学会への加入の呼び掛けが
その主な内容である。(入手ご希望の向きは部会幹事までご一報
願いたい。)
- 航空宇宙航法の将来とそれに対応する部会活動の展望
3.1 大洋上の航空路
航空関係では、航法といえば、CNSという略語が使用される。
Cはcommunication、通信、Nはnavigation、航法、Sはsurveillance、
監視である。
航空機の運航は、原則的に地上からの航空管制によって
行われているが、その地上の管制センタと航空機上との意思の
疎通が、Cの中心であり、機上において、航空路を求める技術がN、
地上で航空機の位置とその動きを測定するのがSである。
また、航空機の飛行段階としては、国内航空路、大洋上
(大陸間、人口の少ない大陸上を含む)、空港周辺(ターミナル
進入)と着陸の4段階に分けるのが普通である。
そして、航法システムとしては、船舶と同様に、機上の
自立式の推測航法システムと機外の基準を使用する天文、地文と
電波航法システムとからなりたっていて、電信、電波航法
およびレーダを主とする電波監視の各システムは、これらの
各飛行段階に対応するようになっているか、それに対応する
よう開発が行われている。
若干の違いはあるが、宇宙航行でも、ほぼ同じような技術が
利用されると考えられる。これらのすべてを、ここで展望する
ことは不可能であり、また、その任でもないが、今後の部会活動に
関係のありそうないくつかを展望してみよう。
まず、注目しなければならないのは、この研究部会でも既に
紹介されているICAOのFANS特別委員会の動向である。この委員会は、
昨1988年5月に最終的な報告書をまとめているが、その中で最も
注目されるのが、大洋上の航空路でのCNSである。
大洋上の航空機の通信は、現在は短波回線で行われているが、
雑音による低品質、低信頼度のために、近い将来に、衛星中継に
よる航空移動衛星業務(AMSS)に変わると考えられている。
この航空移動衛星通信は、日本、アメリカ、ヨーロッパ各国など
でいろりろな実験が行われており、このAMSSの周波数利用の要件と
その標準勧告方式(SARPs)を定めるためのICAOのパネル会議が
設置され、既に、その第1回会議が開催されている。
大洋上の航法では、ロランCなどの利用のできる一部の沿岸を
除いて、現在は、管制航法装置とオメガ航法が使用されていたが、
将来は、全世界的航行衛星システム(GNSS)が使用されるように
なるだろう。
GNSSの代表はアメリカのNAVSTAR GPSであるが、ソ連のGPSと
同様のシステムで、従来はその内容は全く知らされていなかった
GLONASSも、ICAOのFANS委員会(と国際海事機関(IMO)の航行安全
小委員会)でその概要が公表され(4)、現在は、
GPSとの組合わせ使用なども話題になっている。その他、
ヨーロッパからの衛星航法システムの提案もある。
従来の大洋上の監視は、航空機からの位置報告だけが頼りで
あったのが、AMSSを使用する自動従属監視(ADS)が提案されて
いる。
このADSは、機上の航法装置の位置のデータを、定期的または
地上からの要求によって自動的に衛星通信で地上の管制センタに
送信するものであって、従属というのは、機上の航法装置の
位置データに依存することを意味している。
これに対して、もう一つの衛星監視である協調独立監視(CIS)
も実験段階にある。この方法は、地上―衛星―機上の
トランスポンダ間の電波の往復伝搬時間の測定によって、
衛星と航空機間の距離を知り、それを2衛星(別に航空機の
高度が必要)について行うことにより、航空機の位置を、
機上の航法装置の位置データとは独立して求めることができ、
データの冗長性がえられる。
CISの協調は、機上にトランスポンダを搭載することを
意味している。このCISの一種が前述したRDSSであって、
アメリカで民間企業が開発し、その利用者を募っているが、
これを航空機が使用するかどうかは、いまのところ明らかでなく、
連邦航空局の態度も比較的冷ややかであり、RDSSはむしろ
陸上車両を対象としたシステムということができる。
機上との協調のない独立監視は、レーダを搭載した衛星に
よって実現できるけれども、前述したRTCAの報告では、
その技術は、2010年には実現しないとしており、地上の
レーダ監視でも、航空では機上のトランスポンダを使用する
二次監視レーダ(SSR)が、むしろ主力になっているので、
衛星上のレーダ要求はいまのところほとんどない。
航空への衛星利用で、今後、注目する必要があるのは、
国際海事衛星機構(インマルサット)の動向である。
インマルサットはその名の通り船舶の衛星通信を行う
国際組織であるが、そのインマルサット条約の改正により、
航空移動衛星通信(と陸上移動衛星通信)にもその衛星が
提供できるようになり、また、設立当初より無線測位も
その業務中に入っている。
前節でも触れてある通り、公衆通信を含めてその衛星を
用いた航空機通信の実験が、日本、その他の加盟国で
行われており、無線測位の実験信号も衛星から出されている
と伝えられており、また、それらの事務局としての構想も
多くの場で語られている(5)。
3.2 国内航空路
国内航空路の航法システムの技術は、よく確立されて
いるが、今後の課題の一つとして、GPSなどのGNSSの利用に
当たっての問題がある。
既に、その一部は、研究部会でも紹介し、航海誌にも
掲載されているが、衛星の故障時のシステムの冗長
カバレージとインテグリティ(完全性、システムの故障
を警報するシステムの能力)の不足についてである。
航空管制についてもいくつかの話題があるだろう。
例えば、データ通信を加味した二次監視レーダシステム
であるSSRモードSがあるほか、既に、その一部は紹介済み
である航空管制による航空機搭載の衝突防止システムは、
開発には、わが国も一部の主導権があり、現在は、衝突を
高度方向での回避による開発が行われているが、将来は、
水平回避も含めた方式に発展することが期待されている。
その他の管制システム自身の問題としても、現在進め
られている羽田空港の沖合展開、成田空港の二期工事、
関西国際空港の三大プロジェクトの進展により、交通量の
大幅な増加が予想され、交通流制御の導入などが考えられ
ており、更に将来は、航空路にこだわることなく、航空機が、
出発地から目的地まで、その希望するコースと高度をできる
だけ満足させつつ、安全な交通制御をすることなどに関する
研究も活発になるだろう。
この他の問題として、管制情報システムの入力としての
音声認識技術の応用、航空管制への人工知能技術の応用など
の課題もある。航空機上の各種のシステムや機器も、新世代の
航空機の出現とともに、部会として取上げるべき技術も
多いだろう。
3.3 進入と着陸段階
現在、航空機の進入着陸誘導に用いているILSは、
一定降下角の直線的な進入しかできない。また、周辺の地形
や建造物の影響を受けやすく、これらによりその誘導性能が
制限されている。
このような問題を解決し、より高度な運用能力を有する
マイクロ波着陸システム(MLS)の開発が世界的に行われており、
国際的な技術基準もでき、ILSとMLSの共存機関をへて、
1998年には完全にMLSに移行する計画も作られている。
MLSは広範囲に高精度の三次元の位置情報の提供ができる
ため、空港への進入路の柔軟な設定ができ、また、V/STOL機
(垂直/短距離離着陸機)などの新型機や、スペースシャトル
などの宇宙往還機に対しても、それぞれの飛行特性に応じた
進入経路を提供できる能力をもっている。
現在、角度系の装置の開発は、ほぼ終わっており、空港に
設置して、その設置と運用上の問題、ILSとの併設、運航方式
などについての評価が実施されている段階である。
前述のように、これらに関する研究の成果の一部はすでに
研究部会でも紹介されているが、まだ多解決を要する問題も
多く残されている。
例えば、周辺の建造物や大型航空機によるマルチパス
(多経路反射波)の影響についての数学モデルによる解析の
研究が進められているが、まだ一般的に適用できるまでには
その手法は確立されていない。
また、滑走路からの距離を示す高精度距離測定装置(DME/P)
は、その開発が遅れている。このDME/Pは、現に航空路で使用
されているDMEとの共用性をもたせるため、かなり無理な
システム設計になっており、V/STOL用の高精度の達成には、
更に開発が必要と考えられている。
今後は、着陸からロールアウト(滑走路離脱)までの誘導を
するための高カテゴリー化、曲線進入などの高度な運航方式の
開発など、MLSの有する潜在能力を十分に発揮させる課題も
多くなるだろう。
夜間や低視界時の空港内の地上誘導には、現在、ミリ波の
電波の空港面探知レーダ(ASDE)が用いられているが、
航空機を識別する機能がなく、管制上は補助的な役割しか
果たしていない。
大規模空港では地上走行車両も多く、特に、MLSの
高カテゴリー運航が開始されると、低視界でも着陸可能と
なるが、滑走路離脱から先の地上誘導が問題となる。
このため、航空機、車両などの移動体の識別、位置、
移動方向の情報が得られるシステムが要望され、基礎的な
研究が進められている。
これは管制官が移動体の監視に用いるもので、この他に、
移動体に進路を指示し、誘導するための灯火による走行援助の
研究も行われており、これらが組合されて地上移動誘導・
制御(SMGC)システムが構成されるだろう。
更に進んだ形として、現在、ターミナルの管制に使用
されているターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)
と飛行計画情報処理システム(FDP)を有機的に結合した
空港面管制情報処理システムの構築等も考えられるだろう。
3.4 宇宙飛行
衛星の位置の決定は、地上からの測距をもとにするのが
普通であるが、最近は、GPSによる衛星上での測位が、
低高度軌道のLANDSAT4衛星などで実験されている(6)。
わが国が計画している無人宇宙往還機のHOPEや、
欧州宇宙機関(ESA)が計画しているHermesでは、
宇宙ステーションやプラットフォームへランデブとか
ドッキングするためには、実時間で正確な位置を把握する
必要から自立型を中心とした航法手段を用いなければ
ならない。
この場合、中心的な役割を果たすのはやはりGPSで、
これに慣性航法装置(INS)や恒星センサを組合わせた
複合航法システムにより、正確な時刻標準とともに、
位置、速度、姿勢などの航法情報をうる方法についても
研究が進められている。
アメリカの航空宇宙局(NASA)でも、現シャトル、
次世代のシャトルを含むスペースプレーンの主な
航法システムとして、GPSの使用が検討されている。
以上は宇宙空間での航法手段であるが、地球への
帰還過程の際の滑走路への進入の前段階では、多数の
DMEとINSの複合航法が、進入から着陸までには、MLSの
利用も考えられている。
GPSを宇宙用として使用するには、単にその使用する
空間の環境条件が変わるだけでなく、宇宙船の運動が
非常に高速であるためにドップラー効果が大きいとか、
大気圏突入時のブラックアウト後の衛星信号のできる
だけ早期の補足などの問題があり、MLSでも高仰角での
高速進入など宇宙航行用としての特異な問題を多く
含んでいる。
今後、わが国の宇宙開発計画が進展していくに
したがって、宇宙航行に関する研究も部会として多く
取上げることとなるだろう。
- 陸上航法
余計なお節介といわれそうであるが、一言述べて
おきたい。最近、各国の航法学会などでは、陸上の航法の
研究発表がなかなか盛んである。
例えば、1985年の英国の航法学会の研究集会である
NAV85のテーマは「自動車用の陸上航法と測位」であり、
合計すると32の論文が発表されている。
より最近の例では、1988年6月のアメリカ航法学会の
年次総会のプログラムや論文集を見ると、五つの
セッションのうちの一つが陸上航法に当てられ、
プログラムでは6件の発表が予定され、論文集には、
「アメリカにおける自動車の航法」、「車両追跡システム
に対するロランCの進歩」、「道路を知った航法:
航法用電子データベースの開発」である。
また、同じく、1988年11月30日から3日間、フロリダの
オーランドで開催されたIEEEのPLANS'88(アメリカ電気・
電子学会の測位と航法のシンポジウム―隔年開催)では、
17のセッションの一つが陸上車両の航法と位置報告に
当てられ、7論文が発表され、そのうちの6論文が論文集に
採録されており、その他のセッションにもいくつかの
関連論文がある。
前記セッションでの採録論文は次の通りである。
「磁気的に問題のある陸上車両での低価格磁気センサの
使用」、「推測航法、地図整合とGPS測位の総合のための
カルマンフィルタ」、「コーナ反射器とレーザビームを
使用した車両の位置と針路測定システム」(日本からの発表)、
「GPS、ロランと推測航法センサによる陸上航法と車両群の
管理」、「リングレーザジャイロ(RLG)が地面に下りた:
RLGを使用した方位位置システム(MAPS)の野外試験の結果」、
「航法装置の概念と技術」。
これらを見ても、陸上航法は、航法技術の新しく、また、
問題の多いテーマであり、第一、従来の海上と航空での利用に
比して、陸上車両だけでなく、個人の使用を含めれば、
二桁も三桁以上もの利用者が予想される市場である。
わが国でも、陸上航法の分野に対する関心はかなり高まって
きており、各種の学会、その他の団体、自動車関連工業界、
電子工業界等で多くの研究が行われている。
国際航法学会の日本代表である当学会にとって、陸上航法は、
避けて通れない問題であり、われわれが担当した航空宇宙を
例にとっても、その組織化には相当の時間がかかる問題でも
あるので、なるべく早期に対策を講じられることを誌上を
借りて、提案する次第である。
- おわりに
航空宇宙研究部会は、その発足後未だ3年にも満たない
新参の、また、あまり学会員の諸兄にはなじみの薄い研究部会
である。そこで、その設立の理由と経過、設立後の活動と
この分野での技術とシステムの将来の展望について、若干の
私見を述べ、この部会の将来の活動の方向を考えてみた。
部会の設立以来、その活動に参加をされ、また、ご援助を
頂いている会員各位に感謝するとともに、引続きご援助を
お願いする次第である。