海上交通法規研究会 活動報告
平成27年度秋季研究会
(1)日時:平成27年11月6日(金)14:00~16:00
(2)場所:東京海洋大学 越中島キャンパス
(3)テーマ:明石海峡における航法の適用(副題:海上衝突予防法と海上交通安全法の適用関係)
(4)内容:明石海峡航路を航行する貨物船M丸が明石海峡航路北側屈曲部付近で航路外に逸脱し、明石海峡航路の北側を航行する巡視船Nと衝突した衝突事件に関連した最高裁判決を素材に、明石海峡における航法の適用についてパネルディスカッション形式で討議。
(5)基調講演者:南健悟先生(小樽商科大学准教授)
パネラー:松本宏之先生(海上保安大学校教授)
逸見真先生(東京海洋大学教授)
岩瀬潔先生(海技大学校教授)
司会:藤本昌志先生(神戸大学海事科学部准教授)
(6)参加者数:約20名
(パネルディスカッション一部紹介)
・裁判では解釈論になるが、この議論の帰結は立法政策の問題になるのではないかと思う。疑義を生じないように立法政策が必要である。
・立法政策には賛成である。明石海峡航路は、実務上、潮流が速い。南北の浅瀬の存在。橋脚の存在。航路外側にブイがない等の地理的影響が存在することから、予防法第9条第1項を適用すると、他船との見合い関係が新たに生じる可能性を含む。適用する船舶(属人主義)に対して、予防法第9条第1項および同法第10条第1項は、適用海域(属地主義)をどう捉えるかの問題である。
・航路外側にブイが設置されていないが、橋脚の存在により、航路の外側法線を類推できる。また全ての船舶がECDISを搭載しているわけではないが、搭載している船舶にあっては、航路の中か外かの判別がつく。
・予防法第10条の類推適用については、異論がある。船舶とは右側通行を常としており、予防法第9条1項を適用するのが妥当と考える。
・関門航路の門司埼付近では潮の流れが強いこともあり、100トン未満の西行船舶は門司埼に近寄って航行することができる特定航法が規定されている。
・予防法第9条第1項を適用した場合、漁ろうに従事している船舶(以下、漁船)についてはどうか。漁船も右側通行をしなければいけなくなるのか。明石海峡航路は元来漁場でもあり、外側境界のブイが設置されていない。本事故は、霧中であること等、様々の状況が関連した事故である。単なる狭い水道であるとは言い難い。
・一般船舶と漁船とを区別する必要があると考える。従い、予防法第9条第3項を適用すべきだと考える。
・明石海峡航路において、潮が一番怖い。また、いかなご漁が許可されており、ゆえに狭い水道と考えるが、ECDISがなくても航行できる。
・漁船についての問題は非常に難しい。