「企業における物流組織」 大重貴之((株)三和総合研究所)
「モーダルシフト対策と問題点」 松尾俊彦(広島商船高等専門学校)
「社会資本整備と物流」 高橋洋二(東京商船大学)
「ロジスティックスにおける倉庫・船」 鶴田三郎(東京商船大学)
「物流問題にORは役に立つか」 今井昭夫(神戸商船大学)
「OR技法:物流シミュレーション」 山田猛敏(東京商船大学)
「物流分析とシミュレーション」 藤谷寛幹((株)日立物流)
「国際物流の課題と展望」 三木楯彦(神戸商船大学)
企業における物流組織を、その企業が物流の重要性を認識する一つのバロメータとして捉えようとする試みである。わが国における物流組織論の研究は未熟で、このような取り組みは貴重と言える。メーカーを中心とした荷主企業の物流組織を調査分析した結果、全社的に物流を一括管理し企画・研究・開発を行うスタッフ機能を備えた物流部門を持つ企業も現状は僅かで、これから再編と整理が進むと結論されている。
幹線輸送にモーダルシフトは必要かという問いかけに自ら答える形で展開される。モーダルシフトは純粋に国内問題でありながら温暖化や酸性雨といった地球規模の問題でもあるという指摘に引続き、モーダルシフトの経済学的考察を通して氏の一連のモーダルシフト研究のまとめがなされている。
物流の機能低下が都市内において公的セクターだけでなく民間セクターにとっても経済・社会活動の制約となりつつあることを論述され、公が行う社会資本整備が民間の需要に適切に応える上での調整問題の重要性を論じている。
倉庫研究へのアプローチとして、倉庫と船舶の機能比較から両者を区別するものは機動(輸送)性の有無であるという議論から出発し、多品種少量輸送時代にあって物流フローと情報フローの高速化を必要とし、そのために科学的方法の果たすべき役割が述べられている。
物流問題にORは役に立つのか?と題して極めて重要かつ難問に挑戦されている。著者の得意とする巡回セールスマン問題とビークルルーチング問題を例にしてOR研究者と物流の実務家の歩み寄りの余地と方向性につき論じている。
OR技法の一つであるシミュレーションの物流への応用を著者ら自身で開発されたシステムシミュレーションの事例で紹介されている。国際物流に関わる3つの事例は汎用言語を主体とするモデル化であり、システム構築とプログラム作成にマンパワーと経験を必要とする労作である。
離散系シミュレーション専用言語の活用例を紹介され、物流システム設計やシステム運用方法の検討プロセスで意志決定支援ツールとして有用な成果を挙げておられる。物流分析における最適化技法とシミュレーションの比較という重要な課題についても言及している。
国際物流(正確に言えば国際複合輸送)における近年の動向を述べ、船会社の顧客サービスに対する熱意が今後の盛衰を分かつものであるとの立場で、国際ロジスティックス情報システムの構築に向けての展開ないし展望を述べている。