1. 一般講演(研究会統一テーマ)
(1)「地方の交通及び輸送計画の研究動向」
永岩健一郎(広島商船高専)
地方の交通計画・輸送計画の特徴として本来その交通需要が少ないため都市の交通・輸送と違う側面からアプローチを行う必要があるという説明があり,文献調査には,NACSIS−IR,JICST,Dialogのデータベースを用い,検索された文献の一覧が示され,地方の交通及び輸送計画の研究動向についてのレビューが説明された。
(2)「マルチモーダル輸送ネットワークの構築について」
黒川久幸(東京商船大学)
マルチモーダル輸送ネットワークの構築についての研究対象と解法の特徴について,まず,調査対象として科学技術振興事業団データベース(JICST)の1981年−2000年間における11,407,619件について調査され,道路輸送,鉄道輸送,水上輸送,航空輸送の総件数48187件の研究領域による分類が示された。
@ 問題設定方法としてシミュレーション,数理計画法,ゲーム理論による問題設定の分類
A 問題の定式化からの分類として数理計画法(線形計画法,非線形計画法,整数計画法,確率的計画法,多目的計画法,動的計画法),
B 最適化手法から見た分類として分枝限定法,遺伝アルゴリズム,傾斜法,切除平面法,分割法,ペナルティ法,
C 解法から見た分類として最適化手法,近似法
D 近似法から見た分類として内点法,逐次近似
最後に,検索時における物流関連検索キーワードのシソーラスについて上位語,下位語,同義語,関連語について詳細な資料が示された。
(3)特別講演1
「生鮮食料品輸送について」
本居省三郎(本居船食)
生鮮食料品の輸送について本船への雑貨全般を扱う船食業のお立場から,実務経験を通して多方面に渡る興味深い講演が行われた。
@一般のスーパーと違いは免税品の取扱いが出来ることであり,以前はモールス信号を使った受注業務を行っていたが,現在はインマルサットによるFAXで受注している。
A受注時点での概算と出荷時点での価格格差の解消に苦労が多く,受注品の平均1船当た約300アイテム全体で調整しているが,欠損も発生する。
B外国船についてはドル決済であり,為替差益の影響を受ける。
C船内における生鮮食料品の長期保存については,原則的に無理であり,長期保存のためには冷凍庫をマイナス60℃以下にする必要があるが,船内では無理である。マイナス60℃以上であれば旨味成分がなくなる。
Dブランドよりも出来るだけ長期保存の出来る商品を納入するようにしている。特に納入時における温度管理が大切であり,夏場の輸送・荷役時の温度管理には気をつけている。
という内容の講演があり,来聴者一同興味深く拝聴した。
(4)特別講演2
「地方港湾物流について」
有馬正人(元徳山海陸運送株式会社顧問,大島商船高専非常勤講師)
地方港湾のあり方について,以下のような内容で講演があった。
メーカー,商社,港湾運送業者,船社がお互いの分野で棲み分けが出来ており,優雅に各々成業に勤しんでいれば良かった時代は終わり,未開拓の分野としての「物流」にメーカー(荷主)が直接参入するようになってきた。出来るだけ生産地に近いところで船積みをすること,生産地から本船間でのプロセスを簡略化するという背景から,地方港に定期船の直接寄港が始まった。地方港としても定期航路の寄港により,試験的にはじめてみたところ,物流コストの合理化を十分享受する事が出来ると同時に,国内でのメインポートまでに輸送費が外航船のオーシャンフレイトに比較して非常に割高であることを認識するようになった。そのため,メインポート離れの現象がはじまった。
特に阪神大震災による神戸の機能喪失が地方港に大きな影響をあたえ,代わりに「24時間,通年無休体勢」である釜山港が脚光を浴びるようになった。
地方港の機能が認識され「一極集中型から地方分散型」となってきたことは喜ばしいことであるが,反面「政治の地域エゴ」の問題が顕在化してきた。大型地方港湾が現在では「巨大な釣り堀」や暴走族の「海浜サーキット」になってしまっている。いくら「地方港を見直す」と言っても岸壁とクレーンされ作れば船が入り,貨物が集まるものではないのは自明の理である。
我々1億2千万の国民が存続するために4億5千万の物資を導入しなければならない。石油,LPG・LNG,鉄鋼,食料,飼料,石炭,パルプ材,木材等は導入なくば国の存続はありえない。また,輸出なくば国の繁栄はありえない。海運はまさに国の根幹をなす産業である。我々は国家的見地にたって政治から忘れられがちな「港運」と「海運」が健全に国際社会の中で存続できるように理解と認識と助力が必要だと痛感するしだいである。
という内容の講演があり,来聴者一同興味深く拝聴した。